2014年10月9日木曜日

M国金ファンドのからくり

不動産投資ブームで有名なアジアのM国を舞台に、ちょっと変わった金地金投資があるようなので、その本質に迫ってみたい。


概要を簡単に説明すると、投資家は100万円を支払って、70万円分の金地金を購入して、手元に金地金を保有して日本に持ち帰ります。

この、代金の7割しか金地金を手に入れられないのと、保有するのがポイントです。


投資家は、100万円分の金地金を丸々手に出来ない代わりに、毎月その1.5%の15,000円の利金を半年間貰えます。
そして、半年後、購入した金地金を返還して100万円が償還される。
(償還を選ばずに、もう半年間延長することも可能)

これは、金地金の販売と、半年償還の社債を、組み合わせた取引です。


金地金は行って来いなので、実際には代金の三割の30万円の金集めをしている訳です。

そうなのです。
金地金を販売する必要などは、まったくないのです。
では何故に、こんな複合取引にしているのか?

それは、物事の本質をわからなくし、投資家心理を巧みに突くためではと分析しました。


これに投資をした投資家は、
「この金地金は本物だろうか?」
と実は物事の本質とはまったく関係のないことを考えさせられる。

そして、実際に金地金商に鑑定してもらい、本物であることを確認して、
「ああ良かった。これで少なくとも出したお金の7割は損しなくても済むわ」
とホッとする。

これがまさに、仕掛けなのだろう。

それから、金利も月利1.5%だから年換算利回り18%。
このぐらいならば、「あり得ない数字ではないな」と思わせる。

少し気の利いた人間ならば、勧誘者達の営業マージンにも気が及ぶだろう。
どうやらそれは、複数の人間に支払う合計で月に1%程度らしい。

投資家に月利1.5%で年利18%。
営業費が月に1%で年間12%。
合わせても、月利2.5%で年利30%。


最近話題のみずほ銀行行員による詐欺ファンドが、投資家に月利5%で勧誘者に月に3%、合計月利8%で年利率は実に100%で、過去の121ファンドやスピーシーアービトラージと言った詐欺ファンドは大体これぐらいを唄っていました。


それらと比べると、可愛い数字で、もしかしたらこのぐらいの利回りならば、オイルマネーを中心とした様々な利権事業をやっているようなので、あり得るかな?
と思っても不思議はない。

だが、本当にそんな利率なのだろうか?



もう一度、今度は胴元の立場でこのシステムを検証してみましょう。
(この、立場を変えて考えることが、物事の本質を理解する上で最も重要です)

投資家から100万円のお金が入っては来るが、70万円は金地金の仕入れに消える。(数%の売買差益はあるが、本質とは関係ないので無視して良い)

そうなのです。
投資家から預かれる(集められる)資金は、代金の三割に過ぎないのです。

ということは、胴元は代金の三割の資金を事業などで運用して、投資家には「代金10割」に対して毎月1.5%の利金を払わなければならないのです。


いいですか皆さん?
10割の1.5%は三割に対しては何%ですか?


分かりやすく、投資家が100万円の代金を支払った例で考えます。


毎月の利金は100万円の1.5%で15,000円。
100万円のうち70万円は金地金の仕入れに消えるので、胴元が投資家から預かった運用資金は30万円。

胴元は30万円を事業で運用して、投資家には月に15,000円の利払いをしなければならないのです。
では、15,000円は30万円の何%ですか?

5%ですね。

出たー!
月に5%だ!!


さらに、勧誘者たちに月に1万円の営業費を支払うので、合計では月に25,000円の支払い義務があります。

月に25,000円は、元金30万円の何%ですか?
8.33%。

出たー!
月に8%、年利率100%だ!!


そうなのです。
過去の詐欺ファンドが唄っていた利率と同じです。


胴元は、集めた資金から年利率100%を投資家と勧誘者に支払わなければなりません。
さらに、胴元自体の人件費などの経費を合わせると、少なくとも年利率120%以上で運用できないと破綻することになります。


これが、M国金地金ファンドの本質です。


勿論、これが詐欺ファンドと断定している訳ではありませんよ。


もしも年利率120%以上で胴元が運用できれば、投資家の利金も勧誘者のマージンも、その投資家の預けた資金の運用益から正しく出ていることになります。

しかしながら、もしも運用出来ていなければ、投資家の得る利金は自分のお金の運用益ではなく、「今日新たに預けた別の投資家のお金」から来ていることになるのだ!!
ということを忘れてはならないのです。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

blog、拝見させて頂きましたが納得です!

どの視点から物事を考えるかで見えてくるものがある、全てに言える事かと思いますので肝に命じておきます。

いつもながらとても分かりやすいご説明ありがとうございました。

長野のT.S

匿名 さんのコメント...

なるほど!

私もこの金地金が本物かどうかに気が行くと
思います。

手品やマジックも似た様な所がありますね。

相手の見る所を変えて肝心なネタになる所
に目が行かない様にする。

詐欺も手品も、騙す、と言う意味では同じですね。